飲食店の備品は「消費」ではなく「投資」で買う|1回あたりコストの考え方
備品や消耗品、なんとなく「安いから」「必要そうだから」で買っていませんか。同じものを買うにしても、消費として買うか投資として買うかで、判断の基準も使い方も変わってきます。DRIPLOG EP16では、飲食店を創業する中で見えてきた「事業用の買い物の捉え方」を、2万円のテントを例に具体的にお話ししました。
🎧 この記事は DRIPLOG Podcast EP16 の音声コンテンツと連動しています。Podcastで聴くとよりリアルな現場感が伝わります。
🎧 Spotify · 🍎 Apple Podcast · 🎵 Amazon Music
飲食店の備品購入、普段の買い物と同じ基準で選んでいませんか

飲食店を創業すると、とにかく買うものが増えます。
厨房まわりの備品、什器、消耗品、それに毎日の食材の仕入れ。
開業準備の時期なんて、一日に何度も「買う・買わない」の判断をしているはずです。
そのときに何を基準に選んでいるか。
「これ安いな」「これ欲しかったんだよね」——普段の買い物って、だいたいこの二つのどちらかじゃないでしょうか。
それ自体はまったく悪いことではなくて、プライベートの買い物ならむしろ健全です。
衝動的に買うことがあってもいいと思います。
ただ、事業まわりの買い物だけは、普段の買い物と切り分けて考えたほうがいいんですよね。
同じ「2万円を払う」という行為でも、その裏側にある思考が違うだけで、あとから戻ってくるものが変わってきます。
🎧 Podcast 00:00 〜
消費と投資の違いは「買って終わりかどうか」

言葉としてはよく聞く「消費」と「投資」ですが、線引きはシンプルです。
消費は、買った時点で完結する買い物。
投資は、払った対価以上のものを回収するところまでを含めた買い物です。
つまり、投資は「買った瞬間」がゴールではなく、スタート地点なんですよね。
買って満足で終わるのではなく、そこから元を取りにいく。
回収し終えて初めて、その買い物が正解だったかどうかが決まります。
事業用の備品は、基本的にこちらの側で考えたほうがいい。
なぜなら備品は、それ自体が目的ではなく、売上をつくるための道具だからです。
道具である以上、「いくらだったか」より「いくら生んでくれるか」のほうが、判断材料として重要になります。
この話と地続きの論点として、飲食店の原価率は30%と35%どっちが適正でも同じテーマを扱っています。
🎧 Podcast 01:10 〜
2万円のテントを「1回あたり」で割ってみる

わかりやすいのでテントを例にします。
キャンプ用に2万円のテントを買うとしましょう。
休日にキャンプ場へ行って、設営して、楽しんで、満足する。
これは完全に消費です。
そしてこの買い方は、プライベートなら何の問題もありません。
一方で、マルシェ出店用に同じ2万円のテントを買うとどうなるか。
このテントは日光を遮ってくれるし、雨風から商品を守ってくれるし、そもそもテントがないと出店できないイベントもあります。
耐用年数をざっくり2年、出店が月1回だとすれば、使う回数は24回。
2万円÷24回で、1回あたり約830円です。
3年使えるなら1回550円ほどになります。
この数字が出た瞬間に、判断の質が変わります。
1回の出店で、830円以上の価値をこのテントは生んでくれるか。
雨で商品が全部台無しになるリスクを考えれば、答えは明らかですよね。
そもそもテントがなければ出店機会そのものを失うわけで、830円どころの話ではありません。
判断の前提になる部分は、飲食店開業の初手で失敗しないで整理しています。
🎧 Podcast 01:50 〜
投資思考は「買わない判断」も速くする

この考え方の面白いところは、背中を押すためだけの理屈じゃないことです。
むしろ、「これはいらない」と切り捨てる判断のほうが速くなる。
1回あたりに割ってみたら年に2回しか使わなかった、その2回のために場所を取り続ける、となれば買わない。
逆に、初期費用は高いけれど毎日使うもの、たとえばオペレーションが明確に速くなる厨房機器なんかは、長期で見れば十分に元が取れる、という結論になります。
値札の絶対額ではなく、使用回数と回収期間で見るからこそ出せる答えです。
結果として買うものが同じだったとしても、どういう思考で買ったかによって、その後の使い方が変わります。
「1回830円払っている」と自覚していれば、使わずに眠らせておくのがもったいなくなる。
稼働率を上げようという発想が自然に出てくるんですよね。
あわせて読むと輪郭がはっきりするのが、カフェ開業、店舗より先に露店出店を選ぶ4つの理由です。
🎧 Podcast 03:30 〜
明日から使える、備品購入前の3つの問い

難しいフレームワークは要りません。
カートに入れる前に、頭の中で3つだけ確認してみてください。
1つ目、これは何回使うか。
年間の使用回数をざっくり見積もります。
2つ目、何年もつか。
使用回数×年数で、総使用回数が出ます。
3つ目、価格を総使用回数で割った金額を、1回の使用で回収できるか。
この3ステップだけで、値札の数字が「1回あたりのコスト」に翻訳されます。
仕入れも同じ考え方が使えます。
安かったから多めに仕入れた食材が、使い切れずに廃棄になったら、それは消費ですらなく単なる損失です。
「この仕入れは何皿分になって、いくらの売上になるか」まで見えていれば、まとめ買いの判断も変わってきます。
買い物の場面ごとに、回収までの道筋を一度イメージする。
それだけで十分だと思います。
🎧 Podcast 04:10 〜
まとめ
- 事業用の買い物は、プライベートの買い物と切り分けて「投資」として判断します。
- 投資は買った時点がゴールではなく、払った金額以上を回収するまでが一つのセットです。
- 価格を総使用回数で割って「1回あたりいくらか」に翻訳すると、買う判断も買わない判断も速くなります。
よくある質問
Q. 飲食店の備品は安く済ませるべきですか、それとも良いものを買うべきですか
A. 価格の絶対額ではなく、1回あたりのコストで比較するのがおすすめです。毎日使うものは多少高くても使用回数で割れば安くなりますし、逆に年数回しか使わないものは安くても割高になります。使用頻度と耐用年数をセットで見て判断してください。
Q. 開業前に備品を買いすぎてしまいます。どう抑えればいいですか
A. 「これは月に何回使うか」を先に書き出してから買うと、かなり絞れます。月1回未満しか使わないものは、まずレンタルや他店との共用、あるいは後回しを検討してみてください。回収の道筋が描けないものは、開業時点では買わないという判断で問題ありません。
Q. マルシェ出店用のテントはいくらくらいが目安ですか
A. 2万円前後のものでも、屋外出店の用途であれば十分に機能します。月1回の出店で2年使えば1回あたり約830円で、雨天時の商品保護や出店機会の確保を考えれば回収は難しくありません。ただし耐久性は価格に比例するので、出店頻度が高いなら上のグレードも検討する価値があります。
Q. 食材の仕入れにも投資の考え方は使えますか
A. 使えます。「この仕入れが何皿分になって、いくらの売上になるか」まで見てから判断すると、安さに引きずられたまとめ買いが減ります。使い切れずに廃棄すれば回収はゼロなので、安く買うことより売上に変換できる量を買うことを優先してください。
Q. 投資として買ったものが元を取れたかは、どう確認すればいいですか
A. 購入時に「総使用回数」と「1回あたりのコスト」をメモしておき、半年に一度だけ実際の使用回数と突き合わせるのがシンプルです。見積もりより使っていなければ稼働率を上げる工夫を、大きく上回っていれば買い替えや2台目を検討するサインになります。