飲食店の原価率は30%と35%どっちが適正?業態別の目安と計算方法

原価率の基本からFL比率の実践的な活用法まで、個人飲食店オーナーが押さえるべき数字管理の基本を解説します。

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飲食店の原価率は30%と35%どっちが適正?業態別の目安と計算方法

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「飲食店の原価率は30%が目安」とよく言われます。ただ実際に自分の店の数字を出してみると、32%だったり38%だったりして、これが適正なのかどうか判断がつかない。そういう場面は多いと思います。

結論から言うと、30%はもう「合わせにいく数字」ではありません。日本政策金融公庫の調査では、一般飲食店の原価率の実績値は36.9%です。そのうえ適正値は業態によって25%〜50%まで幅があり、原価率という数字だけを見て良し悪しを判断すると経営を間違えます。

この記事では、原価率の計算式を金額例で一度通して確認したうえで、業態別の目安、原価率60%は危険なのかという判断、そして原価率とセットで見るべきFL比率までを整理します。個人店の規模で実際に使える形にまとめました。

原価率とは?計算式を金額例で確認する

原価率とは、売上に対して原材料費がどれだけかかっているかを示す割合です。計算式そのものはシンプルです。

原価率(%) = 原材料費 ÷ 売上高 × 100

例えば月商300万円の店で、その月の原材料費が96万円だったとします。

96万円 ÷ 300万円 × 100 = 32%

この店の原価率は32%です。ここまでは難しくありません。

「仕入額 = 原価」ではない点に注意

つまずきやすいのがここです。その月に仕入れた金額をそのまま原材料費として計算してしまうケースが多いのですが、これだと正しい原価率が出ません。

仕入れた食材のうち、その月に使い切らず在庫として残っている分は、その月の原価ではないからです。正確に出すなら棚卸しが必要になります。

原材料費 = 期首在庫 + 当月仕入高 − 期末在庫

月初に在庫が20万円、当月の仕入が100万円、月末の在庫が24万円なら、20 + 100 − 24 = 96万円がその月の原材料費です。

月末に棚卸しをする習慣がないと、仕入の多かった月だけ原価率が跳ね上がり、翌月は下がるという上下動が出ます。それは経営が悪化しているのではなく、単に計算方法の問題です。まずは月1回、月末の在庫を数えるところから始めるのが確実です。

原価率は30%と35%、どっちが適正なのか

検索でもよく見かける疑問です。答えを先に言うと、どちらが正解かは業態で決まります。「一般的な目安」として語られる30%は、あくまで飲食店全体をならした平均値です。

ドリンク比率の高いカフェやバーなら30%でも高いくらいですし、焼肉や寿司なら40%を超えていても健全に回っている店はいくらでもあります。自分の業態の水準を知らないまま「30%を超えたからまずい」と判断すると、下げなくていいコストを削ることになります。

そもそも「30%が目安」は現在の相場とズレている

もうひとつ押さえておきたいのが、30%という基準そのものが、いまの仕入れ相場と合わなくなってきているということです。

日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」(2023年度)によると、一般飲食店の原価率の実績値は36.9%でした。よく言われる「30%が目安」より、7ポイント近く高い水準です。

実態としての原価率 ≒ 36.9%

原材料費や物流コストの上昇が続いた結果、実際に営業している店の平均はすでに35%を超えたところにあります。30%という数字は、物価が安定していた時代に定着した目安だと考えたほうが実態に近いです。

ですので、「うちは33%だから目安の30%を超えている。まずい」と焦る必要はありません。同じ調査では一般飲食店の売上高営業利益率は4.3%(黒字かつ自己資本プラスの企業の平均)と出ており、原価率が36%台でも黒字は成立しています。大事なのは30%という数字に合わせにいくことではなく、原価率・人件費・家賃を合計したときに利益が残る構造になっているかどうかです。

👉 判断の順番は「①自分の業態の目安と比べる → ②FL比率で全体を見る → ③粗利額で確認する」の3ステップです。原価率という単独の数字だけで良し悪しを決めないのがポイントです。

業態別・原価率の目安一覧

業態ごとの原価率と人件費率、そして合計したFL比率の目安をまとめました。自分の店がどのレンジにいるかを確認する用途で使ってください。

業態原価率の目安人件費率の目安FL比率の目安特徴
カフェ25〜30%25〜30%50〜60%ドリンク中心で原価は低い。席の回転と客単価が課題になりやすい
バー・スナック15〜25%15〜25%35〜50%原価率は最も低い。ただし席数と営業時間で売上の上限が決まる
居酒屋28〜35%25〜30%55〜63%ドリンクとフードの構成比で原価率を調整しやすい
ラーメン30〜35%20〜25%50〜60%スープと麺の原価が重い。回転率で利益を作る業態
イタリアン・洋食30〜38%25〜30%58〜65%仕込みロスの管理が利益を大きく左右する
弁当・惣菜35〜45%15〜25%55〜65%接客が少なく人件費は低め。売れ残りの廃棄が原価率を直撃する
焼肉38〜45%20〜25%58〜68%肉の原価が高い。ドリンクとサイドメニューで回収する設計
寿司・高級店40〜50%20〜30%60〜75%原価率は高いが客単価が高く、1組あたりの粗利額を確保できる

表を見るとわかる通り、原価率の適正値は業態によって25%から50%まで開きがあります。「原価率35%」という同じ数字でも、カフェなら要改善、焼肉なら優秀という評価になります。

高級店の原価率が高くても成立するのは、客単価が高いぶん1組あたりで残る金額が大きいからです。逆にバーは原価率20%と優秀に見えても、席数が限られていて売上の絶対額が伸びにくいという別の制約があります。原価率の低さがそのまま儲かりやすさを意味するわけではありません。

※ 上表は業態ごとの一般的なレンジです。飲食店全体の実績平均は日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」(2023年度)で36.9%。仕入価格の変動で相場は動くため、幅のある目安として扱ってください。

「原価率60%」は危険なのか

結論として、原価率60%は業態を問わず危険水域です。なぜ危険なのかを、先ほどの月商300万円のモデルで具体的に見てみます。

まず健全な店のケースです。

項目金額売上比
売上高300万円100%
原材料費(F)96万円32%
人件費(L)78万円26%
FL合計174万円58%
家賃30万円10%
水道光熱費18万円6%
その他経費24万円8%
営業利益54万円18%

次に、同じ売上・同じ人件費のまま原価率だけが60%になった場合です。

項目金額売上比
売上高300万円100%
原材料費(F)180万円60%
人件費(L)78万円26%
FL合計258万円86%
家賃30万円10%
水道光熱費18万円6%
その他経費24万円8%
営業利益−30万円−10%

原価率が60%になると、FL比率が86%まで上がります。家賃と水道光熱費とその他経費で残りの24%を賄えないので、この時点で毎月30万円の赤字です。

原価率60%で黒字を維持しようとすると、人件費をほぼゼロにするか、家賃のかからない場所で営業するしかありません。現実的ではないので、60%が見えた時点で原因を特定する必要があります。

⚠️ ただし、計算上一時的に60%になるケースもあります。大量に仕入れた月に棚卸しをしていない、季節メニューの仕込みが月をまたいだ、といった場合です。まずは棚卸しをして、本当に60%なのかを確認してください。

原価率だけで判断すると失敗する — 見るべきは粗利額

原価率の管理でいちばん起きやすい失敗が、原価率の高いメニューを機械的に削ってしまうことです。

2つのメニューを比べてみます。

メニュー売価原価原価率粗利額
ドリンク500円100円20%400円
ステーキ3,000円1,350円45%1,650円

原価率だけを見ればドリンクが圧勝です。ステーキは45%もあり、削減対象に見えます。

ですが実際に店に残るお金は、ドリンクが400円、ステーキが1,650円で、ステーキのほうが4倍以上多いのです。ここでステーキをメニューから外すと、原価率の数字は改善しますが、店の利益は減ります。

原価率はあくまで比率であって、金額ではありません。原価率(%)と粗利額(円)は必ずセットで見てください。とくに客単価を上げたい店では、原価率が多少高くても粗利額の大きい看板メニューが必要になります。

関連して、原価をかけて品質を上げることが必ずしも売上に結びつくわけではない、という話は飲食店の味を90点から92点に上げても売上は伸びない理由でも書いています。原価の使いどころを考えるうえで参考になると思います。

原価率と粗利率の関係

混同されやすいので整理しておきます。粗利率は原価率の裏返しです。

粗利率(%) = 100% − 原価率(%)

原価率30%なら粗利率70%、原価率45%なら粗利率55%です。どちらか一方がわかればもう一方も出るので、扱いやすいほうで管理して問題ありません。

FL比率:原価率と人件費をセットで見る

原価率を単独で追いかけても経営の全体像は見えません。飲食店のコストで大きいのは原材料費(Food)と人件費(Labor)の2つなので、これを合計したFL比率で判断するのが基本です。

FL比率(%) = (原材料費 + 人件費)÷ 売上高 × 100

先ほどのモデルなら、(96万円 + 78万円)÷ 300万円 × 100 = 58%です。

FL比率の目安は55〜60%

一般的な目安は55〜60%以内です。この範囲に収まっていれば、家賃10%前後・水道光熱費6%前後・その他経費を差し引いても利益が残る計算になります。

FL比率評価状態
50%以下優良利益を確保しやすい。ただし品質やサービスを削りすぎていないか確認する
55〜60%適正標準的な水準。家賃比率が高い店は55%寄りを目指したい
60〜65%要注意利益が薄い。家賃10%を超える立地だと赤字に転落しやすい
65%以上危険構造的に利益が出ない。原価か人件費のどちらかに手を入れる必要がある

注意したいのは、FL比率は原価率と人件費率のバランスで動くという点です。原価率を30%に抑えても人件費率が35%あればFL比率は65%になり、危険水域に入ります。

逆に、仕込みに手間のかかるメニューをやめて既製品に切り替えれば、原価率は上がりますが人件費は下がります。この場合、原価率だけを見ると悪化して見えても、FL比率としては改善していることがあります。片方を動かすともう片方も動くので、必ず合計で評価してください。

💡 家賃比率(Rent)を加えた「FLR比率」で見る考え方もあります。目安は70%以内です。家賃の高い立地で営業している場合は、FL比率を55%以下に抑えないと利益が残らないため、FLRまで含めて設計すると判断を間違えにくくなります。

原価率から逆算する価格設定の計算式

目標の原価率が決まっていれば、売価は逆算で出せます。

売価 = 原価 ÷ 目標原価率

原価900円の料理を目標原価率30%で提供したい場合は、900 ÷ 0.3 = 3,000円が売価です。目標原価率35%なら、900 ÷ 0.35 = 約2,570円になります。

ただし、すべてのメニューを同じ原価率に揃える必要はありません。むしろ実務では、メニュー全体で目標原価率に着地させるという設計をします。

原価率の低いドリンクやサイドメニューと、原価率は高いが集客力のある看板メニューを組み合わせて、全体で30%台に収める。看板メニューは多少原価率が高くても、来店動機になっていれば役割を果たしています。

そのため価格を決めるときは、「この一品の原価率は何%か」ではなく「この価格でお客様が注文したときに、店にいくら残るか」という粗利額の視点を持っておくと判断しやすくなります。

原価率を下げる5つの実務ステップ

原価率が目安より高いとわかったら、次の順番で手を入れるのが効率的です。上から順に、効果が出るまでの早さと再現性が高い順に並べています。

1. 棚卸しをして正確な原価率を出す

改善の前に、まず数字を正確にします。棚卸しをしていない状態の原価率は実態とずれているため、そのまま対策を打っても効果が測れません。月末在庫を数えるだけで、多くの店は数値が変わります。

2. ロス(廃棄)を記録する

理論上の原価率と実際の原価率の差が、ロスです。廃棄した食材をノートやスプレッドシートに書き出すと、どのメニューのどの食材が余っているかが見えてきます。

仕込み量が多すぎるのか、そもそも注文が入らないメニューなのか。原因がわかれば、仕込み量を減らすかメニューから外すかの判断ができます。ロスの記録は、原価率改善でいちばん費用対効果が高い作業です。

3. ポーション(一人前の量)を統一する

レシピカードを作り、1品あたりの使用量を決めます。担当者によって盛り付け量が変わる状態だと、原価率は安定しません。

グラム数を決めてスケールを置くだけでも数字は変わりますし、味の再現性も上がるので、品質管理としても意味があります。

4. 仕入れ先を比較する

同じ食材でも、既存の卸業者・業務用スーパー・ネット仕入れで単価は変わります。使用量の多い上位5品目だけでも比較すると、影響が出やすいです。

ただし、価格だけで切り替えると納品頻度や品質が変わって別の問題が出ることがあります。使用量の多い主要食材から、少しずつ試すのが安全です。

仕入れ単価を下げる目的でまとめ買いに踏み切る前に、在庫として抱えるリスクも計算に入れてください。同じ判断構造を物販側で整理したのが飲食店のグッズ制作を長期視点で判断して在庫リスクを見極める考え方です。ロット単価と回転期間の見方は、食材の仕入れ判断にもそのまま使えます。

5. メニュー構成を見直す

ここまでやったうえで、それでも原価率が高い場合にメニュー構成に手を入れます。注文数 × 粗利額でメニューを並べ替えると、店の利益を実際に作っているメニューがわかります。

注文数も粗利額も低いメニューは、食材の種類を増やしてロスを生む原因になっていることが多いので、整理の候補になります。

なお、この5つはすべて「記録があること」が前提になります。POSレジや日々の記録から何を取っておくべきかは、飲食店こそデータを集めるべき理由|POS・天気・アンケートで判断が変わるにまとめています。

よくある質問

Q. 原価率は30%と35%、どちらを目標にすべきですか?

業態によります。カフェやバーなら30%以下、居酒屋やラーメンなら30〜35%、焼肉や寿司なら40%前後が現実的なラインです。なお日本政策金融公庫の調査では飲食店全体の実績平均は36.9%なので、35%は「超えたら危険な数字」ではありません。目安の30%を自分の業態にそのまま当てはめないでください。

Q. 原価率60%でも黒字にできますか?

ほぼ不可能です。人件費と家賃を加えると費用が売上を超えます。ただし棚卸しをしていない場合は計算上そう見えているだけの可能性があるので、まず正確な数字を出してください。

Q. 原価率と粗利率の違いは何ですか?

粗利率 = 100% − 原価率です。原価率30%なら粗利率70%を意味します。同じことを裏表で表現しているだけなので、どちらで管理しても構いません。

Q. FL比率は何%以内に収めるべきですか?

55〜60%以内が目安です。家賃比率が10%を超える立地であれば、55%以下を目標にしたほうが安全です。65%を超えると構造的に利益が出ません。

Q. 原価率はどのくらいの頻度で計算すべきですか?

月1回が基本です。月末に棚卸しをして、その月の原価率を出します。週次で追いたい場合は棚卸しの手間が増えるので、まずは月次を確実に続けるほうが実用的です。

まとめ

原価率は、感覚ではなく数字で管理する対象です。ただし原価率という単独の数字を追いかけるのではなく、業態の目安・FL比率・粗利額の3つと合わせて見ることで、はじめて判断材料になります。

  • 原価率の基準は30%前後。ただし業態別の適正値は25〜50%と幅がある
  • 正確に出すには棚卸しが必要(期首在庫 + 仕入 − 期末在庫)
  • 原価率60%は危険水域。FL比率86%となり構造的に赤字になる
  • 原価率(%)だけでなく粗利額(円)で判断する。高原価の看板メニューを削らない
  • FL比率は55〜60%以内。原価率と人件費率はセットで動く
  • 改善は「棚卸し → ロス記録 → ポーション統一 → 仕入比較 → メニュー見直し」の順

数字で判断する仕組みを持てるかどうかは、料理の技術とは別の経営スキルです。この観点は飲食店が「職人」だけで潰れる理由|経営に必要な4つの視点で詳しく書いています。

また、これから開業する段階であれば、固定費を小さく設計しておくほどFL比率の許容幅が広がります。開業時の考え方は飲食店開業の初手で失敗しない:小さく始めて試行回数を増やす戦略を参考にしてください。

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