飲食店は「お客さんを選んでいい」全員に好かれない店の作り方
「高いんですね」とわざわざ言いに来る人、注文が通らないだけで従業員を責める人。お店をやっていると、どうしても心がすり減る場面がありますよね。DRIPLOG EP14では、そういう声に引っ張られずに済む考え方と、そもそも客層を「設計」でふるいにかける具体的な方法をお話ししました。
🎧 この記事は DRIPLOG Podcast EP14 の音声コンテンツと連動しています。Podcastで聴くとよりリアルな現場感が伝わります。
🎧 Spotify · 🍎 Apple Podcast · 🎵 Amazon Music
飲食店には本当に「いろんな人」が来る

飲食店は、自分以外の誰かに food を提供する商売です。
当たり前のようですが、ここがすべての出発点なんですよね。
感性も価値観もバックグラウンドも違う人が、毎日ドアを開けて入ってくる。
だから、こちらが想定していない反応が返ってくることが普通に起きます。
面と向かって「いいお値段するんですね」と言われる。
勝手に考えたカスタムオーダーに対応できなかっただけで、従業員にガミガミ文句を言う。
お店に来るわけでもないのに、少し離れたところで悪口を言っている。
こういう経験は、続けていればたいてい一度はします。
誤解のないように言っておくと、大半のお客さんは良識的な方です。
理不尽なクレームをつけたり、横柄な態度を取る人はほとんどいません。
でも、人と関わる商売である以上、そういう場面はゼロにはならない。
まずはそれを前提として受け入れておくと、いざ起きたときのダメージが変わってきます。
🎧 Podcast 00:00 〜
「高いね」に引っ張られて値下げしてはいけない

うちはコーヒーを500円で提供しています。
近くにはドトールのような、もっと安いコーヒーが飲める場所もある。
すると、その2つを同列に並べて「高いね」とだけ言いに来る方がいらっしゃるんです。
注文するわけでもなく、わざわざそれだけを伝えに来る。
前提として、価値を伝えきれていない自分たちの側にも課題はあります。
それは認めた上で、それでも心情的にこたえる部分はあるんですよね。
なんでわざわざ、と考えてしまう。
ただ、ここで引っ張られて価格を下げたり、一人ひとりに頭を下げて価値を説明して回ったりすると、間違いなく心が持ちません。
「お客様は神様」という言葉がいつの時代のものかわかりませんが、大切にすることと、奴隷になることは別の話です。
対応する・しないを決める自由は、もっと店側が主張していい。
そして、それでも来てくれる人は確実にいます。
この話と地続きの論点として、飲食店の原価率は30%と35%どっちが適正でも同じテーマを扱っています。
🎧 Podcast 01:50 〜
店側にも「お客さんを選ぶ権利」がある

無理に全員から好かれようとする必要はありません。
これは開き直りではなくて、経営判断としての話です。
100人いれば100通りの価値観があるわけで、そのすべてに最適化した店は、結局誰にとっても特徴のない店になります。
そして、意外と見落とされがちなのが、お客さんを選ぶのは「態度」ではなく「設計」でやるものだということ。
来てしまった人を断るのは角が立つし、現場のスタッフに負担がかかります。
そうではなく、そもそもその人が来にくい店を最初に作っておく。
ここに発想を切り替えると、日々の消耗がぐっと減ります。
判断の前提になる部分は、飲食店アンケートが本当に意味を持つ理由で整理しています。
🎧 Podcast 03:20 〜
客層をふるいにかける設計変数——価格・内装・立地・雰囲気

具体的に考えてみます。
たとえば、めちゃくちゃ安い大衆居酒屋で、タバコが吸い放題で、いつもガヤガヤうるさくて、接客も愛想がない。
そういうお店に、とんでもないお金持ちがたくさん通うかというと、そんなことはないですよね。
逆に、一食5万円のコース料理を出す店に、払った金額以上のものを引き出そうとしてガミガミ言うタイプのお客さんが大量に来るかというと、これもあまり起きない。
内装がピンクでファンシーで、明らかに女性向けに振り切った店に、自分みたいなガサツで可愛い系が恥ずかしくなるタイプの男性が行くかというと、まあ行かないわけです。
つまり、価格・内装・BGM・立地・接客スタイルといった変数を調整すれば、来る客層はある程度コントロールできるということなんですよね。
クレームが多いと感じているなら、それは接客の問題ではなく、設計が想定と噛み合っていないサインかもしれません。
どの変数を動かせば理想の人に近づくか、一度紙に書き出してみる価値はあると思います。
あわせて読むと輪郭がはっきりするのが、飲食店の立地調査は自分の足でです。
🎧 Podcast 04:10 〜
時間の使い先を変える——すり減る必要は100%ない

心ない言葉をかけてくる人への対応に時間を使うくらいなら、笑顔で訪れてくれる人にもっといい価値を届けることに時間を使うほうが、ずっと有意義です。
同じ1時間をどちらに配分するか、という話でもあります。
お客さんは大切です。
でも、それゆえに自分を削ったり、やりたいことを曲げたりする必要が、100%あるわけではない。
創業すると気にしなければいけないことが本当にたくさんあって、できれば安く、とことん安く、それでもいいものを届けたいと思う。
でも、それは叶わないんですよね。
そんな人ばかりではないので、重く受け止めすぎる必要はありません。
ただ、いろんな人と関わる以上、感情の浮き沈みは必ずあります。
人間関係のところで思い詰めずに、素敵なお店を作っていただけたらと思いますし、自分もそうやって頑張っていきたいです。
🎧 Podcast 06:00 〜
まとめ
- 飲食店には価値観の違う人が必ず来るので、心ない言葉をゼロにはできないと前提を置いておくと消耗が減ります。
- 批判の声に引っ張られて値下げや過剰な説明をすると心が持たないので、対応するかどうかは店側が決めて構いません。
- 価格・内装・立地・雰囲気といった設計変数を調整すれば、来てほしい客層はある程度コントロールできます。
よくある質問
Q. 飲食店で理不尽なクレームを言われたとき、どう対応すればいいですか?
A. まず事実確認をして、店側に非があれば誠実に対応します。一方で、こちらの提供内容を超えた要求や人格否定に近い言葉には、すべて応じる必要はありません。対応の線引きをあらかじめ決めてスタッフと共有しておくと、現場が判断に迷わなくなります。
Q. 「高い」と言われたら値下げしたほうがいいですか?
A. 一人の声だけを根拠に価格を下げるのは危険です。値下げは利益を直接削る一方で、価格に不満を言う層は値下げ後も定着しにくい傾向があります。まずは価値が伝わる導線(メニュー表記・POP・接客の一言)を整えてから、それでも売上が動かない場合に価格を検討してください。
Q. 飲食店で客層をコントロールすることはできますか?
A. できます。価格帯、内装のテイスト、BGMの音量、席の間隔、立地、接客のスタイルなど、調整できる変数が複数あります。理想のお客さん像を先に言語化し、その人が心地よいと感じる条件に各変数を寄せていくのが基本の進め方です。
Q. 全員に好かれる店を目指すのはダメなのでしょうか?
A. 目指すこと自体は悪くありませんが、全方位に最適化すると特徴のない店になりがちです。個人店の強みは、誰かに深く刺さることにあります。来てほしい人を決めて、その人の満足度を上げるほうが、結果的にリピート率も客単価も安定しやすいです。
Q. お客さんの言葉で落ち込んでしまいます。メンタルの保ち方はありますか?
A. その場で受け止めきらず、事実と感情を分けて記録するのがおすすめです。改善につながる指摘だけを翌日の営業に反映し、それ以外は手放します。笑顔で来てくれる常連さんの声をメモに残しておくと、落ち込んだときの戻り先になります。