飲食店が「職人」だけで潰れる理由|経営に必要な4つの視点
「うちは味で勝負」——そう言い切れる職人気質のオーナーほど、なぜか売上が伸び悩むことがあります。DRIPLOG EP7では、飲食事業で本当に必要な「料理以外の視点」について、現場の目線から整理しました。この記事は放送内容を再構成したものです。
🎧 この記事は DRIPLOG Podcast EP7 の音声コンテンツと連動しています。Podcastで聴くとよりリアルな現場感が伝わります。
飲食事業は「料理を作って出す」だけの仕事ではない

飲食店を「事業」としてやる以上、料理を作って提供するだけでは成り立ちません。
仕入れの原価を計算し、その材料で調理し、お客様から代金をいただき、その中から人件費・家賃・光熱費を引いた上で、投資に回せる余剰利益を残す。
この一連のサイクルを回して初めて「事業」なんですよね。
もちろん料理を美味しくすることは大前提です。
ただ、美味しさだけを追いかけていると、気づいたときには利益が残っていない、という状況になりがちです。
「美味しい料理を作る」と「飲食事業で利益を出す」は、まったく別のスキルセットだと捉えたほうが健全だと思います。
開業して2〜3年目のオーナーさんが最初にぶつかる壁は、だいたいここです。
腕には自信があるのに、なぜか手元にお金が残らない。
その正体はたいてい、料理以外の視点が抜けていることにあります。
🎧 Podcast 00:00 〜
原価と売価から逆算する「使える食材の範囲」

たとえばハンバーグ屋さんを想像してみてください。
売価は青天井には上げられません。
ハンバーグには相場感があって、地域や業態によって「このくらいまでしか取れない」というラインがあるんですよね。
そこから逆算して、残したい利益を確保するために「使える原価」が決まります。
その原価の枠の中で、お肉にどれだけ振るか、玉ねぎをどのグレードにするか、ソースにどこまでこだわるか——制約の中でバランスを取りながら「美味しい」を成立させるのがプロの仕事だと思います。
職人気質のオーナーほど「いい食材を使えば美味しくなる」という発想に寄りがちですが、原価率が跳ね上がった瞬間に事業としては崩れます。
逆に、原価の枠を先に決めてから料理を設計できると、味とお金のバランスが安定してくるんですよね。
原価率が跳ね上がる前に、自店の適正ラインを数字で押さえておきたいところです。業態別の目安は飲食店の原価率は30%と35%どちらが適正かにまとめています。
🎧 Podcast 01:20 〜
お客様は「料理」だけにお金を払っているわけではない

売上を上げようと思ったとき、単に料理を美味しくするだけでは頭打ちになります。
お客様が支払っている対価は、料理そのものだけではなくて、内装の雰囲気、スタッフとのコミュニケーション、バースデープレートの出し方、そういう体験の総和に対してなんですよね。
たとえば同じ味のハンバーグでも、居心地のいい空間で丁寧な接客を受けながら食べるのと、殺伐とした店で無言のまま出されるのとでは、体感価値がまったく違います。
お客様は「料理+体験」の相対に対して対価を払っている——この前提を持てるかどうかで、値付けや店づくりの判断が変わってきます。
メニュー開発と同じくらい、体験設計に時間を使えているかを一度棚卸ししてみるといいと思います。
🎧 Podcast 02:40 〜
SNSをやる寿司屋とやらない寿司屋、どちらが勝つか

地元で長く続いてきたけど、最近経営が苦しいカウンターのお寿司屋さんを想像してみてください。
職人さんは腕は確か。
でもマーケティングの視点がない。
ここでAパターン「これまで通り美味しい寿司を作り続ける」、Bパターン「SNSを始めて発信も並行する」に分けて考えます。
答えは想像に難くないと思うんですよね。
SNSは実質無料の広告媒体で、今の時代、人はSNSを見てお店を判断するのがデフォルトになっています。
見つけてもらえなければ、どれだけ美味しい寿司を握っても来店には繋がりません。
「腕」は来店動機を作らない。
来店動機を作るのはマーケティング。
この順番を間違えて職人道に没頭してしまうと、腕は上がっても店は静かなまま、という悲しい状態になりがちです。
SNSを触るのが苦手でも、まずはGoogleビジネスプロフィールの整備からでもいいので、見つけてもらう努力を並走させたいですね。
🎧 Podcast 04:10 〜
職人視点と経営視点を両立させるための考え方

とはいえ、職人であること自体は魅力です。
技術に真摯であることが、そのお店の芯になっているのは間違いありません。
問題は「職人であること」だけで完結してしまうことなんですよね。
料理の腕・原価と売価の設計・体験価値の作り込み・マーケティング。
この4つは掛け算で効いてきます。
どれかがゼロになると、他がどれだけ強くても結果はゼロに近づく。
逆に、それぞれ60点ずつでも掛け算されると、100点の職人ワンマン店より安定した数字が出ることがあります。
4つの視点を掛け合わせるには、判断のもとになる数字が手元にあることが前提になります。何をどう集めるかは飲食店こそデータを集めるべき理由(POS・天気・アンケート)で具体的に書いています。
自分がどこに時間を使っているか、週次で振り返ってみるのがおすすめです。
「先週は料理に90%の時間を使っていた」なら、来週は数値管理やSNSに意識的に時間を割り振ってみる。
経営者としての時間配分こそが、事業の成否を決めるという感覚を持てると、店の景色が変わってくると思います。
経営者としての時間配分を決めるには、いつまで店を続けるのかという時間軸が先に必要になります。その逆算の手順は飲食店経営のゴールを何歳までと決めて時間軸で逆算する思考法で扱っています。
🎧 Podcast 05:30 〜
まとめ
- 飲食事業は「料理を作って出す」だけでは成り立たず、原価・売価・体験・マーケティングの掛け算で回っています。
- 美味しい料理を作れることと、飲食事業で利益を出せることは別のスキルで、両方を意識する必要があります。
- SNSやマーケティングは今の時代の必須条件で、来店動機を作るのは腕ではなく発信の量と質です。
よくある質問
Q. 飲食店経営で職人気質のオーナーが陥りやすい失敗は?
A. 食材の質にこだわりすぎて原価率が上がり、利益が残らないパターンが一番多いです。また、料理に時間を使いすぎてSNSや集客の設計が後回しになり、腕はあるのに客数が伸びないケースもよく見られます。まずは自分の時間の使い方を可視化するのがおすすめです。
Q. 飲食店の原価率はどのくらいが目安ですか?
A. 業態にもよりますが、一般的には30〜35%が目安とされています。ただし、大切なのは原価率単体ではなく、売価とのバランスの中で狙った利益が残るかどうかです。まず残したい利益額を決めてから、逆算で原価の枠を設計する順番が健全です。
Q. 飲食店にSNSは本当に必要ですか?
A. はい、必要だと考えています。SNSは実質無料の広告媒体であり、今のお客様は来店前にInstagramやGoogleマップで判断するのが当たり前になっています。全部のSNSに手を出す必要はなく、まずは1つに絞って続けることが現実的です。
Q. 料理以外に飲食店オーナーが学ぶべきことは何ですか?
A. 数値管理(原価率・人件費率・利益率)、マーケティング(SNS・口コミ設計)、体験設計(内装・接客・演出)の3つが優先度が高いです。すべてを一度に極める必要はなく、月ごとにテーマを決めて順番に取り組むと定着しやすいと思います。